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Rolleiflex 2.8FX

 
 
 
 
 
        Rolleiflex 2.8FX

      ローライフレックス

勝手にインプレッション

そもそも6×6に興味を持ったのは、知人が、彼の祖父の形見として貰った二眼レフ「ミノルタコード」の修理をエンゾーに依頼してきた事がきっかけだった。修理と言っても、大した事をした訳ではない。恐ろしく汚れていて、グッタペルカもボロボロになったカメラを手渡され、
「これ、今でも使えますかねえ」
と聞かれたので、一晩預かることにしたのだ。

最初はジャンクかと思ったが、よく調べてみると、みすぼらしい外観とは裏腹に、単にスクリーンとその下のミラー、及び上下二つのレンズが汚れて曇っていただけだったので、とりあえずアルコールで根気よく拭き取ってみた。ほどなく、すすけていたスクリーンに、柔らかな画像が浮かび上がった。

翌日、使えるようになったミノルタコードを持ち主に返そうとすると、「どんな風に写るのか、ぜひ見てみたい」とリクエストされた。露出計も付いていないカメラだから、写真に詳しくない普通の人には撮れない。そこで今度は、フィルムを詰めて町に出た。

はじめて撮った6×6の世界は、当たり前だが正方形で、その新鮮なフレームに軽いカルチャーショックを覚えた。スクリーンの中でちまちまと動く町の風景を見たとき、まるで箱庭を覗いているような感覚に陥り、一眼レフとは全く違った、生々しいリアリティーを感じた。
エンゾーが、正方形フォーマットの世界に踏み出すには十分な体験だった。
「ローライ欲しいな・・・」と思ってしまったのである。


さてようやく、FXの話になる。
どうもエンゾーは「見かけはクラシック、でも中身は最新」という組み合わせのものに弱いところがある。ボロは着てても心は錦。違うか。
ローライフレックスといったら王道は2.8Fか3.5Fだが、セレン式の露出計はいまひとつ頼りないし、さりとて単体露出計を持ち歩くのも何となく面倒だ。結局、消去法で露出計内蔵のGXとFXが候補に残り、ヤフオクで探すこと数ヶ月。良い出物に巡り合い、意匠がクラシカルなFXを入手することになった。
 
      ローライ・スクリーン
(このように像が写る。左右が逆なので、動くものを追尾するには慣れが必要だ)

よく言われることであるが、GX以降のローライは、高級感あるいは質感の点で、明らかにFまでのモデルに劣る。特にGXの評判があまりにも悪かったので、後継機種であるFXは、若干の手直しが施されている。具体的には、グッタペルカがダークグレーの合皮から型押しの牛皮へ、ローライのロゴマークが旧字体のものへ、ピント調整ノブの先端が黒いプラスティックから金属へ、ストラップが旧式のカニ目式へ、それぞれ変更されている。(正直、蛇皮と見まごうようなダークブラウンのグッタペルカは、今ひとつ品位に欠ける。)

ピント調整ノブは、GX以降のモデルでは電池室を兼ねるようになったため、異常にデカくなった。ここまで巨大だと、やはりデザインのトータルバランスが崩れる。クラシカルさが損なわれている一因は、この不恰好なノブにあると思う。まあ、ピント合わせの操作が良好で表示も見やすいのは良いことでもあるが。

ところで、ローライというカメラは、きちんと保持するのがなかなかな難しい。エルゴノミクスデザインを取り入れた大きなグリップが付いているのが当たり前の、現代的な一眼レフに慣れ親しんだ世代にとっては、四角い箱のようなローライは、持つところがなくて当惑するようなデザインである。あのエド・ファン・デル・エルスケンの有名なセルフポートレートが良い例だが、赤ん坊を抱きかかえるように下から手を回すのが正しい。

ただし、シャッターをチャージするときはボディを左手で支えて右手でクランクを回し、ピントを合わせる際には右手に持ち替えて左手でノブを操り、いざレリーズするという段階でもう一度左手に持ち替えて右手でシャッターボタンを押すという、かなり面倒な手順を踏まなければならない。いわば、カメラが人間に寄り添うのではなく、人間がカメラに合わせるスタイルだ。この辺、好き嫌いが分かれそうなところではある(結局、エンゾーはこのお作法に最後まで馴染めず、手放す一因となった)。

また、ローライのファインダーに写る景色は左右逆像なので、動くものを追いかけるのには相当の慣れが必要だ。ついつい、実際の動きとは逆の方向にカメラを振ってしまう。正直な話、動体を撮りたいのなら他のカメラを使うべきだろう。

内蔵されている露出計は、色の異なる発光ダイオードで適正露出を表示するタイプだが、これがかなり神経質な挙動をする。ほとんど露出条件が変わらないようなほんの数mmの動きですら、目まぐるしく表示が変わる。ライカやベッサの露出計の方が、よほど大らかである。どうも、初心者向けと言うよりむしろ、ある程度の熟練者が参考程度に使うためのものと捉えた方が良さそうだ。

写りに関しては、いまさらエンゾーがどうこう言うまでもない。中判ならではのキメの細かさの中に、しっとりとした湿度を感じる、とても品の良い写りをするレンズだ。また、コーティングの技術が進んだお陰で、Fまでと違い、逆光にも多少強くなっている。

ローライフレックスは、撮るまでに色々と儀式が多いカメラである。でも、四角く切り取られた風景を覗いていると、その世界が手のひらの中にすっぽり収まっているようで、なんだか愛おしくなる、そんなカメラだ。


長所

○スクリーンの上で人や車がぐりぐり動く様が、箱庭みたいで新鮮。
○ゆったりとした撮影テンポが心地よい。
○スクエアフォーマットは、135判とはまったく違う世界を体験できる。
○やはり、内蔵露出計は便利だなあ。(←軟弱)

短所

●質感が・・・いや、それは言うまい。
●左右逆像に慣れることが出来るかどうか。それが問題だ。
●高い。べらぼ~~~に高い。新品なんか買えるか。
●12枚撮りしか使えない。

超個人的オススメ度(10点満点)
☆☆☆☆

偏愛度(10点満点)
☆☆☆☆☆ ☆

Yahooオークション出現率(10点満点)
☆ 
*一眼レフと違い、使いこなすにはそれなりの覚悟を要する。





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